2013.05.31
かなづち / Hammer
設計事務所は業務として「工事」はしないので、興味本位なDIYで事務所のデッキの張替に挑戦してみました。 木製デッキはステンレスの90mmもある長いスクリュー釘で留めらていて、それを釘抜きで抜いていきます。 昔から使われている形状の、おそらく30年くらい前に購入したであろう釘抜き(写真右端)で抜いていましたが、とっても大変な力仕事となり、かつ何本も抜いているうちに釘抜きの先端が欠けてしまったので、新しい釘抜きを買いました。
それは「N65(釘の種類)が一発で抜ける」と謳われている現代的に多少アレンジされた釘抜きです(写真右から2番目)。釘抜きはテコの原理を使って抜くものなので、この釘抜きの形状と握りのグリップのおかげで、釘抜き作業はぐっと楽になりました。道具って大事ですね。
すると、釘抜きの作業は釘に引っ掛ける部分の後ろを玄能(金槌)で叩いて差し込むのですが、今度はこれもおそらく20年以上前に購入されたであろう玄能(写真左から3番目)がどんどん欠けていってしまうのです。まるで肉たたきにニンジンでもぶつけているかのようです。同時に30年くらい前の玄能(写真左から2番目)も使っていましたが、こちらは欠けたりはせずに金属部分と柄の部分を留めるのに使われているくさびがとれてしまいました。
まだまだ使えるものではありますが、作業効率を考えて1本新しい玄能を買いました(写真左端)。新しいものは「S55C(炭素鋼)・熱処理済」と書かれています。新しい釘抜きと新しい玄能になり、どちらかが負けて欠けてしまうことなく無事釘抜き作業を終えることができました。
建物でも、どこかが強すぎると弱いところが負けてしまい、建物の重要な強度を脅かすことがあります。 「強固な材料、頑丈な材料」はとても安心できるように聞こえると思います。でもたくさんの材料が使われてできる建物の一部にしか使えない場合は注意が必要です。適正な耐用年数を配慮し、多少力の弱い材料でも全体のバランスを考え柔らかい建物として設計することも可能です。
建物全体の調和を常に考えながら調整していくことが設計事務所の大事な役割なのです。
2013.(吉野 百合江)