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  手ざわり / touch feeling     

   
いつもの手荷物が重たく感じるようになってきました。
老化という二文字を感じつつ、振り払って日々を過ごしているところ、雨の日にはまた一つ傘を持つことに負担を感じてしまいます。

いつの間にか、そんな厄介者のように分類された傘ですが、今日初めて使った傘の柄"手元"と呼ばれる部分の手ざわりの良さに感動しました。
その傘は生地柄が気に入り、これまで自分が使用してきた代々の傘の値段を上回る思いきった買い物でした。
実際のところ、私にとって手元の部分は生地に対して、素っ気ない印象でした。

そんな期待値の低さが良かったのでしょうか。よりによって普段は持ち歩かないノートパソコンまで持参の重い手荷物の日に、新しい傘を使うことになりました。さらなる重たい気持ちの中、傘を差して最寄り駅に向かうところで、傘の手元のすらりとした太さ、感触、カーブにすっかり魅入ってしまいました。

よく見てみると、無垢の木材を曲げ、丁寧に仕上げてある様子がわかります。
傘を畳んでからも、その感触を確かめ観察し、傘は荷物ではなく、その手ざわりと共に連れ立って移動しているようなものでした。

建築に関わる業務の中で、普段から手摺りや取っ手、床などの手ざわり、足ざわりにアンテナを張っているつもりでした。こんな日常の一コマから、人に寄り添う建築として、考えて行きたいところがたくさんあるなと思いました。

2021.(吉野 百合江)


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